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大聖寺(山梨県南巨摩郡身延町)―都の清涼殿に安置されていたという不動明王坐像

今年の夏の家族旅行は山梨県の南部

山梨というと、前回のエントリでも書いた福光園寺(ふっこうおんじ)吉祥天および二天像を筆頭に、数多くの素晴らしい仏像がある。

今回は県南部への旅行ということでその地域のお寺を調べてみたが、開帳日は春に決められているお寺が多い。今回はあまりお寺めぐりはできないかな、と思いつつももう少し調べてみると、富士川沿いの大聖寺(だいしょうじ)というお寺に平安時代の不動明王がいらっしゃることがわかった。

拝観についてはわからなかったが、この日は28日で不動明王の縁日。うまく法要のタイミングに合えば拝観させていただけるかもしれない。下部温泉へのちょうど道すがら、ということもあり寄ってみた。

大聖寺外観

背後には森を背負い、門を入ったところには、石段の手前に大きな木がある。独特でとてもいい雰囲気だ。

大きなケヤキは主幹部は空洞になっているが、未だに瑞々しい緑の歯を茂らせている。樹齢900年ということだ。

大聖寺のケヤキ

大聖寺本堂。破風の部分がとてもきれいだ。

大聖寺本堂

本堂前には銅製と見える不動明王像もあった。

大聖寺 本堂前の不動明王

お堂の前まで来ると、扉が開いており、はたしてお堂からお経らしきものが聞こえてくるではないか。ちょうど法要をしているようだ。

しばらく外で待っていると法要が終わり、中からお寺の方と思しき女性が降りてきて、どうぞ、と言ってくださった。いつもは開帳していませんが今開いていますので、と言う。ちょうどいいタイミングだったようだ。

中に入ると、護摩の火を消したばかりの煙でもうもうとしている。護摩壇の周囲では、山伏の格好をした4名ほどの方が法要の後片付けをしていた。その中のお一人がいろいろと説明をして下さった。

この寺は、平安時代末期に新羅三郎源義光が開いたそうだ。その後、義光の曾孫である加賀美遠光が都で魔物を退散させたことの褒美として、宮中・清涼殿に祀られていたという不動明王を下賜され、それが現在こちらのお寺にいらっしゃる不動明王である、ということである。

不動明王坐像(藤原時代)ヒノキ材 像高84.4cm 国指定重要文化財
不動明王坐像

不動明王には「大師様」と「十九観様」という2つの様式がある。

簡単に言うと、大師様は、総髪で三つ編みの辮髪を垂らす目は両目とも見開く上顎の歯で下唇を噛む、という形式であり、弘法大師が唐から持ち帰ったと言われる様式である。代表作は東寺講堂の不動明王(国宝)

不動明王坐像 

十九観様式は、髪の毛はチリチリ目は片目は開き片目は半眼で上下をにらむ天地眼右の牙を上左の牙を下に出す牙上下出、というもので、天台宗の僧・安然による「不動十九観」に基づくものだ。代表例としては、金剛寺(東京都日野市)の高幡不動こと不動明王(国重文)や、浄楽寺(神奈川県横須賀市)の不動明王(運慶作・国重文)などであろう。

一般的には大師様の方が古式であるとされる。

また、これ以外にも願成就院(静岡県伊豆の国市)の不動明王(運慶作・国宝)などのように、ミックスされたような感じの像も多い。

この不動明王は、髪の毛は総髪で、目は両目とも見開き、上顎の歯で下唇を噛む、という典型的な大師様である。

不動明王坐像

清涼殿に祀られていたというのが真実かどうかはわからないが、地方仏の雰囲気ではなさそうだ。とてもよくまとまっておりバランスもいい。

不動明王 羂索

辮髪の三つ編みがとても綺麗なのが印象的だ。
不動明王 顔 左側面

突然の来訪にもかかわらず、非常に丁寧に対応していただいたことに御礼をして外に出る。

不動堂を振り返ると、破風の上にある鬼瓦のような鬼の面が、「また来いよ!」とでも言わんばかりにニンマリと笑っていた。

木製鬼瓦

大聖寺

〒409-3421 山梨県南巨摩郡身延町八日市場539
TEL:0556-42-2815
拝観:不明(4月29日は不動尊祭典があるが開帳されているか不明)
拝観料:志納
アクセス:身延町役場から車で4分/「八日市場」バス停から徒歩15分
駐車場:大聖寺門前にある身延町歴史民俗資料館と共通の広い駐車場がある(無料)

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