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円明寺(岐阜県可児市)【後編】— 五大明王磚仏と弁財天、緻密な釈迦三尊像

 — 前編より
岐阜県可児市には優れた仏像が遺されているが、土岐源氏の城のあった久々利の里にある円明寺は、まさしく土岐源氏によって再興されたゆかりのある寺である。平安時代作の地蔵菩薩を始め、数多くの仏像を有している。

本堂の秘仏・本尊薬師如来坐像の入った立派な厨子と十二神将の並ぶ須弥壇の裏には、数多くの仏像が並んでいる。

その一角にある厨子を、ご住職は特別に開けて下さった。

弁財天像二体

本来はお正月3が日のみのご開帳だという。2体の弁財天が並んで同じ厨子に入られているというのもかなり特殊であると思うが、厨子を開けた時の雰囲気がすごい。独特な神々しさがある。2体の造形はハッキリと違っている。

木造弁財天像(江戸時代) 像高28.0cm 市指定文化財

宇賀弁財天

向かって右にあるのが頭に宇賀神をのせた「宇賀弁財天」である。ムチムチとした造形がやわらかさを感じさせる。表情のふくよかさといい、やさしい弁天さんだな、と思う。

木造弁財天像(江戸時代) 玉眼 像高26.7cm 市指定文化財

弁財天像 顔

向かって左の弁財天は鎌倉時代作っぽい雰囲気を感じさせられる。とてもきれいに造られており、造形のレベルの高さを伺うことができる。

弁財天倚像の様子

椅子に座った形の倚像であり、琵琶を立てて持っているのがまた珍しい。

愛染明王の脇にある小さな厨子をご住職がゆっくりと開けて下さると、中から小さな三尊像と誕生釈迦仏が現れた。

釈迦三尊像(詳細不明)

釈迦三尊像

衝撃的であったのは、それぞれ10cmに満たない小像ながら、かなりの細密な造形がされている点である。

釈迦如来坐像

釈迦如来坐像

表情もしっかりとしており、玉眼も入っているように見える。

普賢菩薩の左腕には截金(きりかね)も見える。

普賢菩薩坐像

普賢菩薩坐像

光背は透かし彫りになっていて、これがまた細かくよく出来ている。

文殊菩薩坐像

文殊菩薩坐像

見れば見るほど「すごい」という言葉ばかりが出てしまうような三尊像であった。

そして今回、最も衝撃的だったのがこちらである。

磚(せん)製 五大明王像(江戸時代) 像高23.8cm 市指定文化財

磚製五大明王像

ご住職の話では、先代住職の時に現在の本堂を再建する際、地中より発掘されたという。板状のもので、そこにかなり細かい彫刻がされている。

それぞれを見ていくことにしよう。

まず中央にはリーダーの不動明王。ちょうど割れた部分が顔の部分になってしまったため、左顎が欠損してしまっているが、よくできている。炎の造形などもとてもいい。どうやら大師様不動明王のようである。

不動明王

不動明王の下には制多迦童子矜羯羅童子の二童子もちゃんといる。制多迦童子のいなせな感じがカッコいい。

二童子

牛に乗った大威徳明王。普通は弓矢を持っているが、これは持っていないようだ。

大威徳明王

金剛夜叉明王。目が横向きのが4つ、額に縦向きに1つという五眼ある特徴からわかる。

enmeiji23

軍荼利明王。この像だと小さくて「大きな栗の木の下で」のお遊戯の手のようにも見えるが、胸の前でクロスさせる軍荼利の印がわかりやすい。

軍荼利明王

そして降三世明王。印もわかりやすいが、ちゃんとシヴァウマーを踏んでいる。

降三世明王

明王の周囲は雲を表す彫刻や松のような線刻があり、さらに左上には雷神、右上には風神がいる。これらがとてもいい表情で、ご住職のお気に入りなのだそうだ。

雷神

雷神

風神

風神

この1枚でかなり濃い空間が形成されている。1体1体の彫刻がとにかく細かい。

磚仏(せんぶつ 塼仏とも書く)と言うと明日香・川原寺裏山遺跡から大量に発掘されたのものが著名であるが、如来などの仏の姿を型を使ってレリーフを作って焼き、金箔を貼ってお堂の壁一面に貼ることで堂内を荘厳したものと解釈されるのが一般的である。磚(塼)とはつまるところ煉瓦のことである。

しかしこちらの磚仏には裏面の彫刻がある。

磚仏裏面

ちょっとわかりづらいかもしれないが、不動明王の持つ、龍がからみついた倶利伽羅剣である。この様子からしても、壁にはめこむタイプの磚仏ではないことがわかる。

磚仏は仏具であったり、携帯する念持仏的なものとしての性格を持ったものもあるそうで、ご住職の話では、修行者が携帯したのではないか、ということであった。

いずれにしてもものすごい彫刻である。これがたまたま地中から掘り出されたというのは、やはり何か縁があるということなのだろう。

私も美濃源氏に由来を持つと伝えられている者だが、ご住職も同じく美濃源氏である土岐氏の流れなのだということだ。今回、たまたま可児市教育委員会にオススメされてこちらのお寺にお邪魔したが、はからずも美濃源氏出自のご住職のいらっしゃる美濃源氏ゆかりのお寺に私が訪れたというのも不思議な縁である。

それにしてもご住職にはこの上なくよくしていただいた。ここまでしていただいた経験はなく、居心地がよくつい長居してしまった。気がついたら2時間もお世話になっていた。お忙しい時なのに本当に申し訳ないと感じると同時に、本当にありがたく思った。

ご住職は最後にお年賀の福飴まで下さった。飴は車中でおいしくいただいた。

福飴

【平牧山 円明寺(圓明寺)(えんめいじ)】

〒509-0224 岐阜県可児市久々利1135
TEL:0574-64-1700
拝観:要予約
拝観料:志納
アクセス:予約制の予約バスなどがあるが利用は難しい。最寄り駅は名鉄広見線御嵩口駅(2.5kmほど)だが、タクシーを使うことを考えるのであれば、新可児駅からが望ましい。
駐車場:お寺の東側にあるが、事前に連絡を入れる必要がある(無料)

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