MENU

壽宝寺(京都府京田辺市)—昼と夜の顔をもつ真数千手観音

奈良滞在も3日目となり、いよいよ今回の奈良旅のメインである東大寺の良弁忌の日となった。1年でこの日のみ、法華堂の執金剛神像開山堂の良弁上人像が開帳されるのである。

法華堂の大改修工事が3年にわたっていたこともあり、執金剛神像は久しぶりのご開帳ということで、おそらく開帳法要直後は混んでいると予想されたので、午前中は仲間たちと南山城へ少しだけ出かけた。

まず、京田辺市の三山木駅近くにある壽宝寺へ。

壽宝寺山門

昨年秋にも拝観させていただいているが、藤原時代作の、実際に手が1000本近くある千手観音像がいらっしゃることで有名だ。

壽宝寺

壽宝寺 千手千眼観音菩薩立像(藤原時代)像高181cm 国指定重要文化財

壽宝寺千手観音像

(絵葉書より)

光が正面から当たって口や目の彩色がはっきり見える厳しい「昼の顔」と、上からの柔らかい照明では彩色がほとんど見えなくなる穏やかな「夜の顔」の2つの表情を持つといい、お寺の方が扉を開け閉めしてどちらの表情も見せてくださる。私としては夜の顔の方が像の持っている美しさがよく感じられて良いと感じた。かつては穏やかな顔になる夜に法要が営まれていたそうだ。

手には1本につき1つずつの目が墨で書かれている。一部にそれがしっかり見えるところもある。千本の手に千の目ということで、普通に考えてしまうとちょっと怖いのだが、それだけ私たちをしっかり見て救ってくださるということなのだろう。

一般的な千手観音というと1本あたり25の願いを叶えてくださるということで40本、それと合掌する2本の大きな手を合わせた42本というものがほとんどだ。実数で千本もしくはそれに匹敵する手の数を持つ真数千手観音は何体か存在するが、唐招提寺像(天平時代・木芯乾漆・国宝)と葛井寺像(天平時代・脱活乾漆・国宝)、これに壽宝寺像を加えた三体が最もよく知られている。

真数千手観音は、どうしても脇手が多いためにものすごいボリュームで、まるで羽のようになるのだが、壽宝寺像は著名な3体の中でもとりわけ翼を広げたような造形に見える。そしてボリュームのすごさに圧倒されるという感じではなくよくまとまっており、むしろバランスの良い美しさを感じる。

収蔵庫内の千手観音の両脇にいる2体の明王像もなかなか気になる存在だ。

降三世明王像(左)、金剛夜叉明王(右)(平安時代)

降三世、金剛夜叉明王

(リーフレットより)

その造形も個性的で惹かれるものがあるが、降三世明王の右足元に注目してしまう。降三世明王は異教の神であるシヴァウマーの夫妻を踏み殺していて、足元に2体の神が踏まれつつ横たわっているのが一般的だが、この像のウマーと思われる神は、横たわることなく、むしろ明王を頭で支えているようにも見える。ウマーさん、負けてない!

千手観音の圧倒的な雰囲気とちょっと個性的な二明王像に満足していると、ちょうど次の予約の団体さんがいらっしゃったので、入れ替わるようにお寺を後にした。

※千手観音像は2014年4月22日からの京都国立博物館における「南山城の古寺巡礼展」に出展されます

【壽宝寺(じゅほうじ)】

〒610-0313 京都府京田辺市三山木塔ノ島20
TEL:0774-65-3422
拝観:要予約(雨の日は拝観不可)
拝観料:300円
アクセス:近鉄京都線三山木駅から徒歩5分
駐車場:門前にあり(無料)

[mappress mapid=”33″]

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次